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保育士転職前に知っておきたい!保育士苦労話

保育士に転職する前に知っておきたい苦労話

子供好きだけでは済まされない…保育士転職前に知っておきたい苦労話たち

ここでは、保育士として転職した方々の苦労話を語っていただいています。

「子供が大好きだから」といった志望動機だけでは済まされないかも…。

あなたにとって「転ばぬ先の杖」になれれば幸いです。

 

転職先で涙を流し耐えた保育士…訪れた平和

おじ様(30代・男性・保育士)

私が転職した幼稚園は、年少と年長の2つのクラスに別れていたのである。主に担当していたのは年長の方で、園児達が安全に生活できるように見守るのが私の仕事だ。常に沈着冷静に仕事をこなしており、「真面目で好感が持てる」と園長に言われたこともある。この時は褒められたので思わず照れてしまったのだ。

ところが、この年に年長になった子供の中に、無口で何も言わないタイプの子供がいたのである。軽く話しかけてみたが何も言わずそれでいて、何かあるとすぐに泣きだすのだった。対応に苦慮した私は同僚の保育士に訊ねてみたが、分からないと首を振るばかり、園長先生も頭を悩ませていたみたいだ。

 

しかも、その子は親が迎えに来た際に、私の方を指さして何かよくないことを言ったのだ。その話を聞いた親は私の方に寄ってきて、「子供を叱らないで」と怒鳴りつけてきたのである。「叱ったことは一度もありません」と応じたが、聞く耳を持たず、親は子供を連れて家へ帰った。

 

悔しいと感じた私はトイレに行き、顔を洗いながら涙を流した。それを見ていた同僚は、私に「気にするな」と声をかけたが忘れられるものではなかった。

次の日、今度はその子の父が幼稚園を訪れ私に注意をしに来た。園長先生と同僚が私を庇ってくれたので嬉しかったが、父は話を全く聞かず、私へ思っていることを言い続けた。父の近くにいる子供は、私達が困っている姿を見るのが楽しいらしく、微笑みながら見上げていたのだった。腹が立ったが注意をするわけにはいかず、黙って耐えているしかなかった。

話を終えた後、父は「子供を違う施設に通わせる」と言い、子供を連れて施設の外へ出た。その話を聞いた私は嵐が過ぎ去ったと感じたせいか、足から力が抜けその場に座り込んだ。同僚も同じ思いだったみたいで、安堵の溜息をついていた。

 

目をつぶって何かを考え込んでいた園長先生は、「仕事の時間」と言って、子供達がいるクラスに向かって行った。皮肉な話だが、あの子がいなくなったことで、クラスの中に温かい雰囲気が戻ってきた。話をしない子供が別の施設に行ったことで、大きな変化が起きたのには驚いたが、私自身にも良いことだったので素直に喜んだ。

あの子供がどうなったかについては、園長先生が後で教えてくれた。他の所でも上手く馴染むことができず、今度は両親が苦労する羽目になったそうだ。小学生に入学した時は、きちんと学校に通えるのだろうか、ふとそんな疑問が頭に浮かんだ。両親が私達を信じてくれたら、違う結末になっていた気がする。